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2007年中日日本シリーズ特集

「ノリ劇場」終幕は涙のMVP

53年ぶりの日本一を決め、中日中村紀(中央)は歓喜の輪に加わる
53年ぶりの日本一を決め、中日中村紀(中央)は歓喜の輪に加わる

<日本シリーズ:中日1-0日本ハム>◇第5戦◇1日◇ナゴヤドーム

 どん底からの頂点へ-。日本シリーズMVPは、中日中村紀洋内野手(34)が獲得した。1月にオリックスを自由契約になり、野球ができなくなる危機からたどり着いた新天地で育成選手からはい上がった。5試合で18打数8安打4打点の大暴れ。文句なしの「シリーズ男」で殊勲を獲得した男は、ヒーローインタビューで泣いた。

 お立ち台のMVP中村紀は両手で顔を覆った。「今年1月からいろんなことがありましたけど…。ドラゴンズさんに本当に感謝しています。本当にありがとうございました」。インタビューの語尾はかすれ、涙が光った。

 日本一決戦。この日も存在感は絶大だった。2回1死一塁でダルビッシュから二塁打でチャンスメーク。1死後の平田の犠飛による虎の子の1点を呼び込んだ。シリーズ5試合通算18打数8安打4打点。唯1人5試合とも安打を放った。

 オリックスとの契約がこじれ中日に育成枠で拾われた。当初年俸は昨季2億円の 1/33 の推定600万円。頭も丸め、まさに裸一貫の再スタートだった。「(同じように)リストラされた人たちにも、いつか結果が出ると、自分が示したかった」。同年代のサラリーマンと変わらない年俸など、野球を続けるための状況、条件はすべて受け入れ再出発した。

 ただ1つ、かつて年俸5億円を稼ぎ2冠王に輝いた打者としてのプライド、生命線である左手小指付近へのこだわりは捨てなかった。近鉄時代の96年に左手を骨折。豪快なフルスイングが持ち味だが、左手首への負担軽減のため、グリップエンド付近に自らテーピングを巻いて使い続けてきた。だが現役時代に手袋も使用せず素手で打った落合監督からは夏場に、テープを外すよう求められた。

 一度は従った。しかし、すぐ元に戻した。「自分のスイングができるようになりたいから」。復活へ導いてくれた恩師の教えに背いてでも、誇り高き強打者の聖域は守り通した。こだわりのバットで勝利につながる安打を重ね、復活ストーリーを紡いだ。

 浪人の危機まで追い込まれて幕を開けた07年。シーズンを締めくくる歓喜の輪の中心には、どん底からはい上がった背番号99がいた。「ここにいること自体が信じられない」。自身初の日本一。「ノリ劇場」の終幕は、これ以上ない形のハッピーエンドになった。【八反誠】

[2007年11月2日9時46分 紙面から]

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