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オレ流究極の非情さい配で悲願V

- 優勝を決め胴上げされる中日落合監督(撮影・鹿野芳博)
<日本シリーズ:中日1-0日本ハム>◇第5戦◇1日◇ナゴヤドーム
非情の交代でオレ竜が頂点に立った。中日が日本ハムに1-0で勝って4連勝を飾り、53年ぶり2度目の日本一に輝いた。1-0で迎えた9回、8回までパーフェクト投球の先発山井大介投手(31)から守護神岩瀬仁紀投手(32)にスイッチし、完全リレーで逃げ切った。04、06年と2度日本シリーズに敗れた落合博満監督(53)は、記録よりも勝利に徹する采配で悲願を達成した。最優秀選手(MVP)には中村紀洋内野手(34)が選ばれた。
落合監督の目が真っ赤になった。半世紀の間、閉ざされていた扉が開いた。帽子を取ってスタンドに決意の丸刈り頭を下げた。1歩また1歩と胴上げの輪に近づくたびに目が潤んだ。
「感無量です。前回は、まだ私が11カ月の時でしたから。長かったですね。この4年間も長かった。涙? 今年は絶対に泣くまいと思っています」。昨年の優勝時に大泣きした指揮官はお立ち台で強がったが目には熱いものが光った。
究極のオレ流采配だ。9回、落合監督がベンチを出た。8回まで完全ペースの先発山井を交代させ、守護神岩瀬をマウンドに送った。まさかの交代劇にスタンドはざわめいた。「山井は完ぺきでした。まさかあそこまで投げてくれるとは…。幸か不幸か(山井が)『もういっぱいだ』と言うので代える分には抵抗はありませんでした」。キッパリとリレーを決断した。
楽天を除く11球団で、最も日本一から遠ざかっていた。過去7度のリーグ優勝はあるが、2年連続でシリーズに進出したのも初めて。シリーズで負けた教訓は次に出場する時は風化していた。半世紀の空白を埋めた最大の要因は4年で3度のシリーズ進出という球団史上初めての常勝軍団をつくったことだ。
4年前、落合監督は心に決めた。「監督が1番やっちゃいけないことはな。焦ったり怒ったりすることだ。選手が見れば監督が泡食っていると思うからな」。投手交代時、落合監督はベンチから無表情でゆっくり歩く。怒っている時も、うれしい時も、野次られても、マウンドまで同じように歩いた。みんなが監督の一挙一動を見ているからだ。
昨年11月、落合監督は東京の自宅から名古屋に戻った。東京駅の改札を出ると予約していた新幹線はすでに発車間際。発車を知らせるベルを聞いた人々がホームへの階段を駆け上がる。だが落合監督だけは歩いていた。「オレはな。何があっても走らねえよ」-。
一歩、外に出ればどんな時もオレ流という仮面を外さない。だが内心は苦悩の連続だ。8月、福留不在のチームが首位から陥落した時、自宅で信子夫人に弱音を漏らしたという。「どうしようか…」。9月、巨人、阪神とのデッドヒートの最中にはシャワーを浴びた後の半裸の姿に信子夫人が仰天した。好運を呼ぶというゴム製品を首、手首、腰、足首と体中に巻きつけていた。強く、したたかに見えるオレ流は不安でがんじがらめだった。
笑わないから愛されない。話さないから理解されない。そんな職人にとって勝利こそがすべてだ。
「オレはな。職人なんだよ。野球を突きつめたいんだ。この世界には野球を食い物にしようとする政治家みたいなやつがたくさんいる。そういうやつに負けたくない。オレは記憶に残りたいなんて思わない。オレたちはプロなんだぜ。結果がすべてだろ。優勝回数が1番多い監督が、1番すごい監督なんだ!」
ひたすら勝つためにすべての感情をぐっとこらえてきた。この日の山井交代のシーンが象徴的だった。
選手たちの手で4度、宙に舞った。職人が自分に激情を許すほんのわずかな瞬間。抑えてきた感情の分だけあふれる涙は熱かった。【鈴木忠平】
◆落合博満(おちあい・ひろみつ)1953年(昭28)12月9日、秋田県生まれ。秋田工から東洋大に進んだが、野球部の体質になじめず3カ月で退部。大学も中退した。プロボウラーを目指すなど2年間のブランクの後、東芝府中で野球生活を再スタート。世界アマ代表、都市対抗、日本選手権などの活躍が認められ、78年ドラフト3位でロッテ入り。82年に史上最年少(28歳)で3冠王。85、86年にも連続3冠王。86年オフに牛島ら4対1のトレードで中日に移籍し、日本人初の1億円プレーヤーに(年俸1億3000万円)。93年オフにFAで巨人移籍。95年4月に通算2000本安打を達成したが、名球会入りを拒否。96年オフ、自由契約により日本ハムに移籍し、97年には大杉に次いで2人目の両リーグ1000安打。44歳の98年まで通算20年間プレーした。首位打者5回、本塁打王5回、打点王5回、MVP2回、ベストナイン10回。右投げ右打ち。04年に3年契約で中日監督に就任。1年目でリーグ優勝。3年目の昨季もリーグ優勝を果たした。
[2007年11月2日9時45分 紙面から]
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