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オレ竜執念、価値あるドローでM25

9回表2死、代打・井上が起死回生の同点ソロを放つ(撮影・加藤哉)
9回表2死、代打・井上が起死回生の同点ソロを放つ(撮影・加藤哉)

<阪神3-3中日>◇30日◇甲子園

 勝利のなくなった延長12回のマウンド。この試合6人目、デニー友利が最後の打者矢野を打ち取ると、三塁ベンチから雄たけびが上がった。マジックが1つ減って「25」。4時間41分の死闘の末、今季の阪神戦勝ち越しを決め、優勝へ1歩前進した。「上にいるチームは負けなきゃいいんだ。こっちは負けなかった。向こうは勝てなかったということだろ」。落合監督はドローの価値をかみしめた。

 執念の“藤川打ち”が死闘の幕開けだった。1点を追う9回2死走者なし。土壇場で打席には代打・井上。全球直球勝負の6球目。外角高めに151キロストレートがきた。うなりを上げて伸び上がる白球を太い腕でたたきつぶした。打球はぐんぐん伸びてバックスクリーン右へ。勝利を疑わなかった甲子園のファンが、一瞬にして静まり返った。「いいピッチャーだから、真っ直ぐを1・2・3で思い切っていきました。見逃せばボールだけどうまく打てた」。球界NO・1と言われる剛球を執念で打ち砕き、勝負を振り出しに戻した。

 8月上旬。落合監督は球宴後から続く世間の藤川フィーバーに、苦々しくこう言った。「速い球を打つにはそれなりの前段階がある。準備ってものがあるんだよ。(打てないのは)技術がないんじゃないか。それに『わかっているのに当たらない』とかよく平気で選手が言うよな! 引退した選手ならまだしも、現役でまだ対戦するんだろう。オレだったら口が裂けても言わない。そういう時代なのかなあ…」。まるで打つことが不可能なような論調に腹を立てた。力は認めても白旗なんて上げるな-。この日、指揮官の気迫が乗り移ったかのようにオレ竜打線は剛球に食らいついた。今季藤川の自責4点のうち2点を奪った。井上の1発も追い込まれてからの粘りが生んだ。

 負けていれば最悪のムードだった。初回、1点を先制してなお1死一、三塁から森野がスクイズを失敗。打ち直したが、最悪の併殺にたおれた。8回まで3併殺。ちぐはぐな攻撃でリズムがつかめない。2-1の7回から先発朝倉に代え、平井を投入して逃げ切りに入った。だが平井が同点に追いつかれ、8回には岡本が矢野に勝ち越し適時打を浴びた。必勝リレー崩壊で今季初の3カード連続負け越しか…。そんな流れを執念で押し戻した。

 同点とした直後の9回には守護神岩瀬を投入。延長10回からは好調の鈴木を送った。代打も、リリーフも総動員で必死に食い下がる虎の勢いを止めた。「あと1点あれば勝ててたゲームだな。ベンチの不手際を一樹(井上)の1発が救ってくれたよ」。帰りのバスへと歩く落合監督の表情には、心地よい疲労感がにじんでいた。【鈴木忠平】

[2006年8月31日9時47分 紙面から]

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